この時期になると思い出すことがある。
無人駅で黒板に伝言を書いて電車に乗った日のこと。
愛媛県に住んでいた頃、年中夏のような沖縄とは気候が違って、季節の変わり目がはっきりと分かった。沖縄から引っ越したばかりの頃は、それが新鮮だった。
最近は、自分の青春はあそこにあったな〜と思うし、死ぬ前に思い出すのはあの頃かもしれないとも思う。
あてもなく漕いだ自転車とか、泣きながら乗った新幹線とか、無人駅で待ち続けた事とか、「暑いあつい」と言いながら汗を拭って歩いた田んぼ道とか。
愛媛から出発して浮かれ気分で乗った「やくも」とか。
隣の席の子と仲良くなって、泣いていたその子を励ました事とか。これから起こるであろう事をわくわくしながら話した事とか。
朝起きると、その年の初雪が降っていて慌てて外に駆け出したこととか。初雪を見ながら、「あの山までは遠いな〜」と思ったこととか。
何も分からなかったけど、何も分からないから全身全霊で青春できたんだと思う。
ただ、あの頃は考える時間が今よりたっぷりあったなぁと思う。
特急に乗るか鈍行に乗るか選ぶ余裕があったし、鈍行に乗って窓の外を見ながら考えたり泣いたり切り替えたり。足取りが軽い時は悩むこともせず特急に乗り込めた。
河川敷で本を読んだり、みんなで目標を言い合ったり、失恋して泣いたりする時間もあった。
青春って時間があるから無駄なことも全力で出来たのかもしれないなぁと思う。
この時期になると、外の匂いとかじめじめした感じがあの頃を思い出させて少しだけわくわくする。
わくわくして、「また一人で行ってみようかな」って気にさせてくれる。
けどその気持ちと同じくらいちょっぴり切なくなる。
沖縄はそろそろ梅雨かな。